最近の著作権談義に関する素朴な疑問。

※元記事は↓です。
知はうごく】「模倣が生む才能」著作権攻防(6)−3
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/entertainment/comic/37339

 JASRACにしても夏目氏にしても、同人市場の中でかなりのウェイトを占める成年向け同人誌についてどう考えているのかが非常に気掛かりです。
 一次創作者に対して著作権料が支払われるのは公正かもしれないけれど、仮にエロ同人サークルからの徴収が確立したら、それが実質的に「原作者公認」とみなされてしまって不都合が生じる恐れもあるんじゃないでしょうか?
 自分もエロ同人誌は大好きなので(笑)偉そうなこと言える立場じゃありませんが、正直これは物凄い地雷原だと思います。

具体的な問題点を書き出してみる

 とりあえず「同人擁護派の意見なので論拠が大幅に偏っている」ということは前置きしたうえで。

  • 認可制を導入した場合、未届けの二次創作はすべて著作権侵害という扱いになるのか?
    • 「黙認」との境界が曖昧、かつ版権元にも後述のような理由で明確な線引きを渋る立場の者は存在するはず。
    • 原作者が二次創作に好意的で黙認したくても、出版・販売元やメディアミックスの提携企業が拒否・または版権収入を望んだ場合は?
  • 二次創作物が”原作では想定していない”性描写や暴力表現・キャラ崩壊など、原作から逸脱・乖離した内容である場合、どのように線を引くのか?
    • いずれも同人誌ではそれなりに人気のある形式ですが、原作ファンが嫌悪や拒絶の感情を示すことも多く、好き嫌いは分かれます。暴力や黒いギャグそのものを問題視しているわけではないことに御注意。
  • 複数の作品をネタにした二次創作は、使った作品すべてに対して著作権料が発生するのか?
    • 北斗の拳サザエさん」系の作風混合ネタ、複数作品のクロスオーバー等。また、使用した作品のウェイトが異なる場合*1、その算出基準は?
  • 出版元自身や関連企業が二次創作的なグッズ…アンソロジーコミック・ノベル、アレンジCD、ファンディスク等…を出している場合、参加者を集めにくくなるのでは?
  • 二次創作そのものが原作やグッズの売上に貢献している広告塔効果への確実な悪影響。
    • また、大手サークルのHPやファンサイトがブログ等にグッズの購入報告を載せているのも、間接的に割と大きな宣伝効果を挙げていると思います。

 ぶっちゃけ無理難題的な意地の悪い指摘ばかりになってしまいましたが、やはり個人的には「いまやオタク向けメディアの多くは二次創作と不可分の共生関係にあるのだから、著作権料の支払いを巡る明確なルールを設けるのは双方にとって不利益」だと考えます。
(※いずれの項目も、「実際にカネを取ったり規制をかけたら、その作品/ジャンルの二次創作は激減して原作人気も不振に終わる」という前提で述べてみました。もともと二次創作への依存度が低い作品群*2は無視しています。)
 原則黙認で、どうしても目に余るようなら小学館のように動くか、二次創作による宣伝効果を拒否する覚悟で自社への直接認可制・審査公認制を設けるか……くらいが無難なところだと思うんですが。
 いずれにせよ、問題の複雑さをろくに知りもせずに第三者が割り込んでルールを強いても碌なことにならないのだけは確かです。JASRACは引っ込んでろということで。




 それから最後の最後に引用元の話題へ触れますが、「模倣が生む才能」説には自分も大いに賛成です。ローゼンメイデンだってシスプリの影響が色濃いですし*3

*1:たとえば「ネギま!」の同人誌で1ページだけ「シグルイ」ネタとか

*2:NANA」「のだめカンタービレ」「ハチミツとクローバー」等の少女漫画、「ブラックジャックによろしく」「クロサギ」等の青年コミックなど、いわゆる”一般人向け”のもの

*3:PEACH-PITが同人時代にシスプリ本を出していたことは有名。雛苺≒雛子、蒼星石の外見≒衛、金糸雀の立ち位置≒四葉など。また、作品全体のゴスロリ趣味もシスプリと微妙に被っています。