現実はドラマになりえるか?

 ここ最近はTBSの世界陸上を見てます。
 個人的に面白みを感じたのが、選手につけられた大仰なニックネーム。女子円盤投げの「未確認飛行レディ」や「ツンドラのビッグママ」や、男子三段跳び「宙を駆ける世界遺産」「スカンジナビアの跳躍貴公子」なんかも凄かったけど、何と言ってもインパクト抜群だったのはモザンビークの筋肉聖母」、女子800mのマリア・ムトラ。その経歴(彼女は内戦が続くモザンビークで、自分が稼いだ賞金をスポーツ振興のために惜しみなく使う国民的英雄だったりするのです)と視覚的なインパクトを見事に表した、今季最高のネーミングだったと思います。


 もう一つの(ちょっと皮肉な)見所としては、放送局側が用意した各競技の予告ビデオと、実際の競技結果とのギャップ
 「笑顔の爆走娘」福士加代子のプロモ?映像は何度も繰り返し放映されて、おかげで「乳首3つ分」という言葉が脳味噌に刷り込まれてしまったけれど、実際のレース結果は……残念ながら予選落ちだったり。
 それから前述の女子800m。「筋肉聖母」ムトラには「シルバー・コレクター」ステファニー・グラフというライバルがいて、この2人の「因縁の対決」を煽る映像も繰り返し流れたのだけれど……決勝前にグラフが不慮の怪我を負って欠場、という事態に。
 他にも、明らかに局側が注目してプッシュしている有力選手や日本人が不本意な結果で終わるたび、素直に残念がるだけじゃ済まずに皮肉な思いも抱いてしまうんですよね。もちろん選手を皮肉る気はないけど、「そこまでして”スポーツ”を”ドラマ”に仕立てたいの?」って。
 過去の試合結果をドラマに加工するのは簡単だろうけど、結末が予測できない現在進行形の競技まで過剰にショーアップして”ドラマ”化するのは、流石に無茶すぎるんじゃなかろうか?と、思わず首を捻るのでした。


 ちなみに「モザンビークの筋肉聖母」マリア・ムトラは、”期待どおり”に強さを見せつけて優勝。これは素直に嬉しかったッス。