なぜか9年の歳月を経て

 『風よ、龍に届いているか。』(ベニー松山、宝島社)を読了。激しく魂に響きますた。
 ウィザードリィ小説の集大成とも言える濃密なバトルファンジー。基本設定はファミコン版II(リルガミンの遺産)をベースにしていながら、いきなり冒頭で宝珠探索が終わってしまうところから物語が始まり、ゲームでは有耶無耶にされていた「天変地異の真相」を巡って更なる冒険と死闘が繰り広げられる……と。
 実質的には『ダイアモンドの騎士』の設定と物語をも内包しているうえ、前作『隣り合わせの灰と青春』ともリンクしていた構成は素晴らしすぎ。
 ……とはいうものの、正直言うと個人的なベストシーンは、バトルに次ぐバトルの終盤よりも、むしろ中盤の山岳小説じみた「スケイル」(梯子山)登攀シーンだったりする。他の場面でも、ウィズ世界の設定や約束事を忠実に再現した場面よりも、多少ゲームから逸脱した部分の方が面白いなぁと思った。