「教訓!逆ギレはしたもの勝ちである。」

 秋葉原某所の古本100円セールで買った『トンデモレディースコミックの逆襲』(幻冬舎文庫唐沢俊一ソルボンヌK子)が大当たり。
 と学会の「トンデモ本」シリーズとは違い、紹介されてるのは筆者夫妻が自ら手がけたレディコミなんだけど……シチュエーションや展開の馬鹿っぷりに加えて作者(+唐沢なをき)の自己ツッコミが絶妙。
 収録作の中でバカ度が高かったのは、足フェチのポルノ作家と風俗嬢の恋を描いた「素足のシンデレラ」、TV局内の権力争いにアマゾンの呪術医が絡んで意外な事態を巻き起こす「ジャガーの瞳」、そして”ロンパールームの都市伝説”を元ネタにした巻末の「悪い子はクマになる」。

・「素足のシンデレラ」

女「も……もしも事故とかで私の足がなくなったら……離婚する? 王子様はガラスのクツがはける足の女ならだれでもよかったんじゃないの?」
(中略)
男「そうだ! ボクはただ君の足だけが好きなんだ! だが君の足は君という胴や頭がなくては生きていけないから ボクは君の心も好きになるよう努力するんだ 君の足が事故でなくなったら愛する足の所有者だった君と足を思って生きたいんだ」
女「(そして私は お金さえあればだれでもいいと思っていた) あたし 貧乏作家をヒモにしてるホステスなんていやよ」
男「無名のポルノ作家だけど量産タイプだから年収2千万 えーと……税金多いから実質は1400万かな」
女「年収1400万……1か月約100万円……家賃が30万円くらいの部屋に住めるのね バスルームや洗面所が広くて寝室にはウォーク・イン・クローゼットがついてるのね そして私は輸入ものの1枚7千円くらいする下着をつけて……2人で月収100万じゃ60万のバッグは無理だけど2万円のクツを毎シーズン買い換えていいのね」

「……好き」

 だいぶ長い引用になったけど、ここまで冷静に計算された「好き」は初めて見た。女に両足で顔を踏まれながら挿入する、やたらとシュールな「理想の体位」といい、お似合いのバカップルだと思う。


・「ジャガーの瞳」

 幻想的な設定といいストーリー展開といい、この本の中では普通に面白い作品なんだけど、ツッコミのおかげでトンデモ方面の魅力が倍増。
 剽悍で野性的な呪術医・ジャドのアップ絵に「こいつのコピー、まだ持ってるんですけど、どうしましょうね?」というキャプションが付いてたので、数えてみたら1作で同じ絵のコピーを6回も使い回してるし。ゆでたまご桐山光侍忍空の作者の人)もビックリだ! ……でも、そうでもしなきゃ月産200枚なんて無理だろうけど。
 終盤でジャガーに変化するヒロインも、ツッコミのおかげでヤンキー確定。


・「究極の玩具」

 バ〇ブ収集家の奇妙な発明を題材にした「えすえふ」物。これもツッコミが冴えまくり。
 幼い頃に遭った事故のせいで性的不能に陥った作家が、その頭脳と財産を生かして触手責めマシーンを造り、実験台となった女性編集者と快感を共有する……んだけど、出力を最大に上げるコマへのツッコミ
「DJ感覚でGO!」が最高。


・「悪い子はクマになる」

 さえない幼稚園の先生が制服デザインコンテストへ応募したことで有名デザイナーに見初められ、ホームパーティーに招待されるが……!?
 これは現物を見てもらったほうが絶対に笑えるけど、とりあえず文字バレで。
 彼女のデザインした園児服を着た有名デザイナーたち(もちろん全員、いい歳した青年やヒゲ面のオッサン)が一堂に会するシーンに大爆笑。
 その後も幼児語でお遊戯するは園児服のまま「先生」をレイープするはと傍若無人な振る舞いが続くものの、途中で逆ギレした彼女が主導権を握ってブラックなオチに雪崩れ込む辺りは秀逸。