「現実」と「仮想」の、理想的な融合形。

 「うででん」こと『.hack//黄昏の腕輪伝説』(依澄れい角川書店)完結となる3巻を、およそ1か月遅れで購入。いつのまに出てたんだ?というか、不覚にも既刊を売り払ってしまっていたので、改めて1〜2巻も買った上で通読。

 ……感服。非の打ち所がない大団円。
 正直、ここまで見事な物語に化けるとは、TVアニメ放映時や1巻の頃には予想もしなかった……。
 TVアニメ版は最初の数話こそコメディとして良く出来ていたものの、途中から前作「//SIGN」と同様の鬱展開に陥ってしまったので大不満だった。率直に言えば、観ていてちっとも楽しくなくフラストレーションだけが溜まっていくアニメは好きじゃない。(『十兵衛ちゃん2』も同じ穴のムジナだったような……)
 ところが漫画の方は、看板倒れに終わった「明るく楽しい.hack」をキッチリ描写した上で、ネットゲーム「THE WORLD」内部のゴタゴタとプレイヤー・管理者といった「リアル」側のドラマも雄弁に語りあげている。”不正規アイテム”を巡る騎士団長・神威やコミヤンとの確執→和解、キャラクターの削除=死を突き付けられたミレイユ・凰花・HOTARUの葛藤→決断などなど、あらゆる面でアニメ版のストーリーを凌駕していると思う。バルムンクや放浪AIゼフィ、先代ドットハッカーズも非常に上手い役どころを担ってるし。アニメは時間的制約が厳しいとはいえ、ここまで違いが出るものなのか……。
 個人的ベストシーンは、「あのとき(後編)」冒頭の2ページでリアルのプレイヤー達が描かれる場面。手を握り合う「秀悟」と「れな」を見た瞬間には泣きそうになった。

 本編だけでも異様に充実しまくってるのに、オマケの外伝2本と4コマも凄い。元・同人作家の本領発揮と言うべきか。特に、チートを真正面からネタにした「ミレイユちゃん参上☆」は単品でも完成度高し。
 この分厚さと充実度で前巻までと40円しか違わないのは安すぎだと思う。